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2014/06/30

大日本帝国がターミネーターを実用化

戦争が始まると人はだれかを殺しに、またはだれかに殺されに戦場へ行かなくちゃなりません。映画の「ターミネーター」(the Terminator)シリーズみたいに、ロボット同士の戦いで決着がつけばいいよね。
戦時中の日本軍が人型の戦闘ロボットを実戦に投入していたことがわかりました。その性能はシュワちゃん並み。1932年6月23日の東京朝日新聞「鬼神を泣かしむ壮烈な戦死 渋谷少尉等の奮戦記」から引用します。伏字は当時の秘密保持のためでしょう。読みやすくするため、改行と句読点をおじさんが加えています。太字挿入はおじさんによります。

【平壌特電】臨江(注・中国吉林省)付近の激戦で名誉の戦死を遂げた渋谷少尉、佐藤特務曹長、多田、西村両上等兵等の戦死状況の公報は22日原隊に到着したが、それによると4勇士の壮烈なる戦士は、鬼神を泣かしめるものがある。
渋谷少尉は19日払暁、臨江を奪還せんと攻撃して来た数倍の敵を撃破せんと、○○名を率いて奮戦中、軽機関銃に故障を生じ、苦戦に陥りたるも更に奮戦、敵前15メートルに迫り、拳銃をもつて敵数名を倒し、軍刀を抜いて突撃を命じ敢然敵陣に突入し、敵数名をなぎ倒し奮戦中、不幸敵弾が左眼に命中し、弾は頭部鉄兜(かぶと)を射抜き、致命的重傷を負ひながらも、同少尉は更に屈せず、群がる敵2、3名を斬り倒し、軍刀を高く振り上げ「突っ込め、突っ込め」と連呼しながら壮烈なる戦死を遂げた。(後略、引用おしまい)
眼球からヘルメットを射抜く貫通銃創。普通の人間なら脳の損傷がひどく、まず即死でしょう。しかし、渋谷少尉は死にましぇん。渋谷少尉は脳が壊れてなお「破れ傘刀舟悪人狩り」のごとく、敵兵を続々に斬り捨てます。「てめえら人間じゃねえ。叩っ斬ってやる!」とタンカを切る刀舟と違うのは、少尉本人がすでに人間じゃなくなっていること。
おじさんはゾンビを信じませんし、このお話は軍が公式発表して全国紙が報道しているからウソであるはずがない。皇国はその高度な科学技術をして、戦闘ロボットを開発していたと考えるのが自然でしょう。動力は日本軍らしくディーゼル油かな?
次は1938年10月6日同紙「血達磨百人斬り 麒麟峰に散る」から引用します。

【○○にて石母田特派員5日発】瑞昌(注・中国江西省)麒麟峰の激戦中、27日遂に戦死した樋上浦一中尉(広島出身)の奮戦は特記すべきであらう。遺品の軍服は寸断寸断(ずたずた)に裂け、数十名を斬った日本刀は血糊ですつかり錆び、刀身や双眼鏡のケースにも十数カ所の弾痕あり。その勇名は麒麟峰とともに永久に消えぬであらう。
中尉は9月19日から20日にかけて展開された丁家山(注・江西省)の戦闘には、間断なく逆襲し来る敵と交戦。
弾丸の尽きた後は、十数時間に亘って(わたって)、岩石を投げ下し(ママ)ながら防戦。敵の群がる山の斜面にまで飛込んで(ママ)斬り伏せ斬り伏せ、敵の手榴弾を奪ひ取つて投げ付けるといふ超人的武勇を振った。(引用おしまい)
視認できる標的に石を落とせるほど見晴らしのいい陣地から斬り込んで斬人斬人。奪った手榴弾も投げる、部隊全滅につながりかねない戦術的非常識を侵せるのもターミネーターだから。銃弾を食らっても死にません。続きを引用します。

27日の麒麟峰の激戦では、全身には蜂の巣の如き敵弾を浴びながら、朱(あけ)に染まりながらも左右の敵を斬り伏せ、その数は百名近かったとの事である。
部下の田中正三軍曹(栃木県出身)、田中利男伍長(広島県出身)を引連れて(ママ)、敵の機銃陣地に飛込み(ママ)、呆気に取られて居る敵兵を見る間に押倒し(ママ)、戦友を悩ましたチェコ機関銃を奪ひ取り、麒麟峰占領の端緒を開いたのであつた。(引用おしまい)

樋上型は、渋谷型から6年後のタイプだけに、中国兵への攻撃バリエーション、スピードがはるかに向上したみたい。十数時間の岩石投下の後、錆び刀で100人斬りですから、新型ロボットはバッテリーの持ちもいいですね、ってバカじゃないの?
おじさんは死者を嗤っているのではありません。国民をバカにした発表をした軍、報道したメディアにあきれています。死者の死に方をふざけて創作したこのストーリー。遺族に戦死の公報渡した際、どの面下げて何を語ったんだか。
戦地で死者が出ると、権力者はその死を美化しようとします。イラク戦争で外務省の官僚たちが殺された時に「この犠牲を無駄にせずイラク派兵を貫徹しよう」との論調が一部にあったことを思い出します。
あれは気持ちが悪かった。戦死なんて最初から無駄死にです。国家のために価値ある戦死なんてありません。戦争遂行に死者が利用される歴史はもうたくさんです。