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2014/06/03

徴兵制と残業代ゼロ

国会で集団的自衛権のつたない論議がなされる中、昔を知る人たちからは戦前と同じ徴兵制が復活するのではないか、といった懸念が表明されています。
おじさんは、そんな意見に異を唱えたいと思います。「ブサヨ!」とか罵声を浴びせるんじゃないよ。集団的自衛権行使可能な状況下の自衛官の雇用がどんな形になるのか、友好国の過去の歴史から考えてみます。
先におじさんの結論を言えば、日本は志願兵制でしか人を集められません。選抜徴兵制にすると、人を取られる企業は経営計画に支障をきたします。集団的自衛権に基づき戦時下にある自衛隊に破壊行動は付き物であっても、生産性や経済性は皆無。軍事費獲得のため法人税も上がるでしょう。大事な主力社員に戦死でもされた日には、経営陣はたまったもんじゃありません。財界も黙っていないでしょう。
実際、自民党でもっとも軍事に明るいうちの一人だとされる石破茂幹事長も徴兵制の採用に否定的です。
前置きが長くなりました。みんなが将来、戦争に行かずに済むように考えているから、もう少しガマンしてね。ベトナム戦争後、選抜徴兵制から志願兵制に移行した米軍についての記事を引用します。1977年11月6日の朝日新聞です。


(前略)選抜徴兵制が志願兵制に切り替わって4年あまり、この間に黒人の比率が高くなってきたというのだ。とくに失業者があふれるこのごろでは、職が見つからず軍隊へ転がり込んでくる若者が増えているともいう。
(中略)ベトナム和平が実現したあとの73年夏、志願兵制が実施されると、今度は逆の立場から懸念を表明する人が出てきた。いわく、人材確保がむずかしい。質が低下する。さらには黒人ばかりの"雇い兵化"……。
米軍総兵力210万弱。75年以降は、全軍が志願兵で構成されている。77年会計年度国防予算1000億余ドル。
ランド・コーポレーション(注・シンクタンク)の報告は反論する。志願兵制による人材確保はOK。17歳から21歳の適齢人口は減少傾向にあるが、高卒率が高まるので、適格者に事欠かない。いやいや制服を着せられる人と違い、相対的に質も向上している……。(後略、引用おしまい)

「黒人が増える」のは、人種差別されて相対に貧しい人たちが多かったから。戦争にはコストがかかります。ベトナム戦争で米国の財政はめちゃくちゃになりました。アフガニスタンやイラク戦争の時も同じ。失業者だって増えるよ。戦争すると浪費だけが増えて国が得るものはないことを覚えておこう。
さて、軍隊組織にたくさんの人間を入れるためには、どうすればいいのかわかったかな?そうです。貧乏で仕事のない若者を増やせばいいんだ。
現在、集団的自衛権の議論と並行して、働く人の残業代をゼロにしようというお話が出ています。本来、1日の労働時間は8時間までだと法律で決められていて、それを超えた仕事には余計に給料を払うことになっています。その分の支払いをやめちゃえというのが、お話の骨子です。じゃあ、8時間を超えてタダ働きしなきゃいいって思うよね。でも、そう簡単にいかないのが大人の事情です。いつかみんなにも理解できる日がくるさ。
がんばって働いても貧乏なままの社会になったらどうしますか?ちゃんと暮らせるだけの仕事がなくなったらどうしますか?住まいも食事も年金も保障される組織に入ることができたら申し分ないよね。その代わり、知らない国の知らない人を殺すことになるかもしれません。生きるために背に腹は替えられないかなあ。
集団的自衛権と残業代ゼロはセットで考えるべきだと、おじさんは思います。もし周りに安部さんゴーゴー、と言ってる人がいても、みんなはいっぺん立ち止まって、この国をよおく見回してみて下さいね。