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2014/06/14

石破幹事長は東条英機の夢を見るか

戦争になると、当事国の国民は一種の集団的ヒステリー状態に陥ります。2003年にイラク戦争が始まった時、おじさんの周りにいた、いつもはリベラルなアメリカ人たちがバーで両腕を振り上げて「USA!USA!」と、そろって大合唱していたのを思い出します。
開戦前になる911ニューヨークテロの後には、「愛国者法(the Patriot Act)」という、市民の人権を大幅に制限する法律が成立。戦争が終わったはずの現在も、オバマ大統領が期限延長の署名をしたことで、効力を発揮しています。権力者は一度手に入れた便利な道具を手放そうとしません。
対米開戦直後の1941年12月17日、日本国民が真珠湾攻撃の熱狂に包まれる中、「臨時の法律」として「言論出版集会結社臨時取締法」が成立します。名前だけで、どんな中身だかわかりますね。翌18日の朝日新聞に東条英機内務大臣(兼首相・陸相)の声明が載りました。以下に引用します。「国内治安の維持、聖戦完遂に喫緊」とのおぞましい見出しが躍っています。朝日新聞も「画期的立法」とベタぼめ。読みやすくするため、おじさんが句読点を加えています。

帝国は今や大東亜戦争の真只中(まっただなか)にあって、国家の総力を挙げてこの征戦目的完遂に邁進(まいしん)しつつあるのである。従って国内における一切の事態は、この厳粛なる事実を基礎として律せられなければならぬのである。本日、国内の安寧秩序保持に関して言論、出版、集会、結社等臨時取締の法律案が臨時議会を通過したことは、かかる国家の要求を充す(ママ)ものである。
抑々(よくよく)戦時下においては、国民の総てが一体となって同じ目的に向って(ママ)秩序ある行動を採ることが戦争目的遂行の不可欠要件であり、これがために行動の制限を受けることはやむを得ざることなのである。本法は、戦時下に在って人心を動揺せしめて社会不安を誘発し、或(あるい)は殊更(ことさら)に国策に反対して国論の不統一を招来する等戦争遂行上に障碍(しょうがい)を及ぼすが如きものに対しては、最も峻厳なる取締を加へんとするものである。しかしながら、純良なる政治、思想の国民運動や言論、文書等の活動を抑圧することは、本法の目的とするところでないことは勿論であって、当局としてはむしろ戦時下にあっては大にこれを助長し、活発旺盛なる国民士気の昂揚(こうよう、注・気分が高まること)を図らんとするものである。
本法の施行と同時に、これに伴ふ内務省令も公布を見るはずである。当局としては本法の運用が上述の目的に添ふ如く慎重なる措置を講ずるのであるが、国民またよく本法の趣旨を理解し、今日史上空前の重大時局下に在て(ママ)、国内治安維持の事柄が、戦争遂行上絶対の要件にある点に深く思(おもい)を寄せられ、相共(あいとも)に協力して、当代国民に課せられたる歴史的使命の遂行に邁進せられんことを切望する次第である。(引用おしまい)

もう狂気の沙汰。掲載する新聞もどうかしてるぜ。敗戦後、これらバカげた法律はこぞってなくなりましたが、このお話を現代より人権意識が遅れていた時代の昔話として笑うことはできません。自民党の石破茂幹事長は昨年、非常時に国民の権利を制限する旨、表明しています。集団的自衛権が行使されると、どうなるのかな?
1941年の亡霊は、まだ日本を徘徊しています。